ひとりで暮らす小さな平屋の家

ひとりで家を建てて、ひとりで生きていく。

結婚という形に捕らわれず「自分ひとりで生きていきたい」。そう考える人は増えていると思う。社会的に求められているとしても縛られることなく、自分の足でマイペースに歩いて行く姿はたくましいはず。

「自分ひとりで生きる」。とてもシンプルな考え方ながら、マンションやアパートではなく、ひとりで暮らしやすい家はどんな形なのかを考えてみたい。

建物はひとりで暮らすには十分の大きさの平屋建て。自分自身のライフスタイルにあった等身大の大きさがいい。玄関の扉を開けると小さな玄関スペースが広がる。小さな土間に靴が溢れないよう天井まで続く下足入れがあり、振り返った扉を開けると、10畳のダイニングとリビング、2畳分のキッチンが目に入ってくる。

リビングとダイニングは、ひとりで暮らすにも数人の友だちで話し合いをするにも十分な広さ。少し早起きした朝には、ソファに腰をおろしてコーヒーを飲みながらスマートフォンを片手に窓の外に目を向けると、毎日少しずつ成長する植物と鳥が飛び立つ姿が見えるかもしれない。

キッチンは狭すぎて使いにくくなく、広すぎて持て余すことのない大きさがいい。会社から帰宅する途中にスーパーへ立ち寄って食材を購入し、仕事着のままお酒を片手に15分くらいでササッと夕飯を作る感覚。キッチンカウンターの片隅に置いたBluetoothスピーカーから気分に合った音楽を流しながら。

リビングと寝室の間には小さな書斎スペースがある。会社から帰宅したらカバンと会社から支給されているスマートフォンは書斎の机の上に躊躇なくバンッと置く。会社関係のものは全て書斎に。公私混同はしない。長い机は自宅で会社の仕事をするようになった時も仕事がしやすいようにしたもの。
小さくても書斎をつくることで書類やファイル、配線がゴチャゴチャしがちなパソコンの類いがリビングを占領してこない。それだけでリビングがすっきりとした空間になるはず。

まちとひとり暮らしと。

太陽が上がっている時間帯には家が空き家になる。朝起きて会社へ行き、夜に帰宅するひとり暮らしの家の特徴と言えるかもしれない。もし家が大きく目立つ建物で日中に戸が閉まっていたら、町に廃墟感を漂わしてしまう恐れが高まる。軒を低くし落ち着いた平屋で存在感を消し、木々を植えて町に違和感を与えないようにしたい。

まちは人が動き集まって形つくるもの。家の窓から光がもれて夜の道路をぼんやりと照らしたり、換気扇から料理の匂いを外へ漂わしたり、階段を上るタンタンタンタンという音が外まで聞こえたり。生活の音や匂い、人の五感を刺激するプラスの何かを出す家がまちの中で最優先されるべきとも思う。ひとり暮らしの家はその次にあるもの。それが動きのあるまちのバランス。そう考えている。

ただ、深い庇の下でツバメが巣を作ったり、野良猫が雨宿りをしたり、家主がいない時間でも誰かが住んでいるかもしれないけれど。