在宅勤務ができる住宅

朝起きて身支度を調えて満員電車に乗り、会社で仕事を終えたらまた満員電車に乗り帰宅する毎日。そんな日々に終止符を打ったのは人ではなく海を越えてやってきたウィルス。「ちょっと待った!まだ来ないでくれ!」という言葉も通じない。ドタバタしながらも在宅勤務をすることになった人も多いはず。

きっとここから仕事の仕方が変わるような気がしていて、できる仕事は自宅で行い、顔を合わせなければならない時はオフィスへ足を運ぶ。そんな働き方が増えると考えている。自宅で仕事ができる住宅とはどんなものなのか。

家のようでオフィスであり、オフィスのようで家のような形。

生活をする場所である家と仕事をする場所であるオフィスが1つの建物の中にある住宅が求められる。生活と仕事。オンとオフを意識することなく、できる限り自然に切り替えができるような住宅がいいと思う。

1つ目は気持ちの切り替え。

リラックスをした生活とピリッとした仕事。同じ建物の中で気持ちが切り替えられるような仕組みを考えたい。生活スペースとなるリビングやダイニング、キッチンから、できる限り歩行距離が長い場所に在宅勤務をする部屋を計画して、人の気持ちを切り替えるきっかけをつくる。

リビングから階段を上り、廊下を歩き、仕事の水回りとなる場所に入り、仕事を行う部屋の扉を開ける。歩く距離を増やすと同時に、手や足、体にいくつもの刺激を与えることで、少しずつ意識が変えられるようにする。

照明器具にも一手間加えたい。リビングやダイニング、キッチンや寝室は、間接照明や白熱灯もしくは電球色に近い照明器具を選んで気持ちをリラックスさせるようにする。その反対となる在宅勤務をする部屋は、蛍光灯を中心とした仕事環境に近い青い光を放つ照明器具を揃える。空間の雰囲気を変えることで仕事モードに切り替える方法もあると考える。

2つ目は仕事環境の構築。

太陽は東から上り、正午に南を通過し、西へ行くに従い沈んでいく。太陽の光が直接室内に入ってくると、パソコンのディスプレイが見えづらくなったり、目に入り眩しいと感じたりしてしまう。その都度、カーテンなどで遮ることもできるけれど、毎日と考えると手間だ。在宅勤務をする部屋は、安定した光が採れる建物の北側に計画したいと考える。
また、1階ではなく2階に計画することで、眺めがよく気持ちもリラックスしやすい。外を見ながら作成した資料に目を通したりする。そんなイメージ。

リビングやダイニング、キッチンなどの日常生活の場へ行くことなく、お茶やコーヒーなどを入れられる水回りがあると便利。仕事中に少し食べたい高価なお菓子も、この場所にストックしておけば子どもに食べられることはない。笑。トイレも近くに計画しておくことで、気持ちが仕事モードから日常モードにならないようにしたい。

在宅勤務をする部屋にはカギを取り付けて、急に子どもが戸を開けて入ってこられないようにしておく。(こちらから呼ぶのはよいけれど、急にはダメという感じ)十分に奥行きのあるデスクには、大きなディスプレイとキーボードを設置するスペースもあり、会社に出勤している感覚で仕事ができる環境を整えたい。

3つ目はリモート会議への対応。

パソコンを使用したリモート会議では、取引先や仕事仲間に見られても問題がないように、自分の背面は壁が映るようにし、グリーンバックを取り付けてクロマキー合成もできる準備も可能な形。壁面には防音材を入れて、リモート会議の声が他の部屋にあまり漏れないように、他の部屋の声が在宅勤務をする部屋の中に入ってこないようにしておく。

リモート会議にはパソコンのマシンパワーも必要になってくる。安価なパソコンで複数人が参加する会議に出席してもよいけれど、映像が乱れたり、画質が悪くなったり、途中でシャットダウンしてしまっては元も子もない。大きさとパワーに余裕を持ったデスクトップマシンが設置できるスペースも確保しておきたい。

在宅勤務ができる部屋は2室で、書類や物が多い人が大きい部屋、コンパクトな環境で仕事ができる人が小さい部屋。夫婦それぞれが在宅勤務で使用する事を想定しているけれど、学業を修了し働き始めた子どもが在宅勤務をする部屋として使用してもよいかもしれない。

2階の北側に在宅勤務ができる部屋がある以外は、普通の住宅と大きく変わりのない間取り。普通の生活をしてきた家族が、大きく住まい方を変えず馴染むことができる形。できる限り変化は最小限の対応としてみた。