コミュニケーションが苦手な2人が暮らす家

住宅地に住むということは、地域の方々とコミュニケーションを取りながら暮らすという想像をする。緑あふれる開かれた庭に家々が建ち並ぶイメージ。ただ、誰もがコミュニケーションが得意なわけではなく、積極的に人と繋がりたくない人もいる。そこで他人と比べれば少しだけ距離を取りたいと思う人が住みやすい家とはどんな家なんだろう。そんなことを考えてみた。

道路と家の間に背の高い塀で少しだけ縁を切ることで家を他人から干渉されにくい空間を作る。地域から閉鎖的な場所をつくるのではなく気持ち的な緩衝材を設ける感じだ。塀にはただ塀に穴が空いているだけ。アプローチに沿って塀に空いた穴(入り口)を潜ると家へと繋がっていく。ここが2人で暮らす家となる。

住まいは2階建てで建物の形も間取りも至ってシンプル。玄関はなくダイニングにある大きな戸を開けるとダイニングとキッチン、リビングが一望できる形だ。塀の存在が一見すると閉鎖的に思わせてしまうけれど家はオープン。知らない人は意識的に繋がらないようにして、知り合いとは深く繋がる。そんなイメージ。

キッチンやダイニングは土間で水をこぼしても気にする必要のない土間の空間で、一段上がるとリビングが広がる。壁一面に設けられた棚には、お気に入りの本や小物が並べられるはず。オープンなリビングやダイニング、キッチンから奥へ入ると生活に必要な水回りと階段がある。

コの字型の階段を上がると、書斎や物入れ、寝室やクローゼットなどのプライベートな空間が広がる。ただプライベート空間と言っても壁で仕切るのではなく、1階と吹抜を介して繋がり合う。相手がどこにいるのか、何をしているのか、何となくの空気感で感じ合うことができる。

話をすることは苦手でも嫌いでもないけれど、初めて会う人との話には視線が定まらない。少しだけ距離を取ってマイペースに人と繋がり会話を楽しみたい。話をしていく中で一線を越えてしまえば、とてもフレンドリーな人間関係を築くことができるけれど、そこまでが長い。そういう方も多いはず。この家は外から中が見られない塀で外部から来る人との距離をつくり、塀という一線を越えて中に入れば、とてもオープンな庭と家が出迎えてくれる。